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新規事業「最初の10社」の獲得戦略——実績ゼロから信頼を勝ち取る初期顧客の作り方

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こんな人に読んでほしい

  • ▸新規事業を立ち上げたが、最初の顧客がなかなか取れない経営者・事業担当者
  • ▸「実績がないから売れない、売れないから実績ができない」の悪循環にいる方
  • ▸誰も買ったことのない新サービスを、どう売り込めばいいか分からない方
  • ▸初期顧客を起点に、事業を軌道に乗せたい方

新規事業で最も難しいのが、「最初の顧客」の獲得です。実績がなく、知名度もなく、前例もない。この状態でどう信頼を得て、買ってもらうのか。最初の10社を獲得できれば、事業は大きく前進します。本記事では、実績ゼロから初期顧客を作る実践的な戦略を解説します。

なぜ「最初の顧客」が最も難しいのか

最初の顧客獲得が難しいのは、「実績がない」という一点に尽きます。顧客は、導入事例・他社の評判・実績を見て安心して買います。それが何もない状態では、顧客は大きなリスクを感じます。

しかし、最初の顧客を取らなければ実績はできません。この「鶏と卵」を突破することが、新規事業の最初の関門です。突破には、通常の営業とは違う発想が必要です。

戦略1:「課題に困っている人」から始める

最初の顧客は、「広く薄く」探してはいけません。「その課題に、今まさに、強く困っている人」に絞り込みます。

課題が深刻な相手ほど、「実績がない」というリスクより「課題が解決される」というメリットを重視します。逆に、それほど困っていない相手は、わざわざ前例のないものを試そうとしません。最初の顧客は、「課題の切実さ」で選ぶのが鉄則です。

戦略2:「一緒に作る」姿勢で巻き込む

実績ゼロの段階では、「完成品を売る」のではなく「一緒に作る」というスタンスが有効です。

「御社の課題に合わせて、一緒に作り込ませてください」「最初の事例として、特別な条件でご支援します」という形で、顧客を開発パートナーとして巻き込みます。顧客にとっては、自社の要望が反映され、好条件で導入できるメリットがあります。提供側は、実際の現場でサービスを磨き、貴重な最初の事例を得られます。

戦略3:「既存の信頼」を借りる

実績がなくても、「人としての信頼」「これまでの関係」は資産です。最初の顧客は、まったくの新規開拓より、既存のつながりから探す方が現実的です。

  • ▸過去の取引先・知人で、その課題を持っていそうな相手に声をかける
  • ▸信頼できる人からの紹介を依頼する
  • ▸前職や業界のつながりを活用する

「あなたが言うなら試してみよう」という信頼は、実績の代わりになります。最初の数社は、この既存の信頼から生まれることが多いのです。

戦略4:初期顧客を「事例」に変える

最初の顧客を獲得したら、そこで満足してはいけません。その顧客での成果を、次の顧客獲得のための「事例」に変えることが重要です。

導入の経緯、抱えていた課題、得られた成果を、顧客の許可を得て事例化します。「実績ゼロ」から「導入事例あり」になるだけで、次の営業の説得力は大きく変わります。最初の10社は、売上であると同時に、その後の事業を支える「信頼の証拠」になるのです。

焦らず「質の高い10社」を作る

初期段階で陥りがちなのが、「とにかく数を増やそう」と焦ることです。しかし、初期顧客は「数」より「質」が重要です。

自社のサービスで本当に成果を出せる顧客、事例として語れる顧客、長く付き合える顧客——こうした「質の高い10社」を丁寧に作ることが、その後の事業の土台になります。合わない顧客を無理に取ると、成果が出ず、悪い評判の原因にもなります。最初だからこそ、相手を見極めることが大切です。

最初の数社に潜む「偽陽性」の罠

最初の数社を「既存の信頼」から獲得できたとき、多くの経営者が「売れた=事業が成立した」と早合点します。しかし、友人・元同僚・紹介から生まれた受注は、「商品が売れた」のではなく「あなたへの信頼と応援が売れた」状態かもしれません。これを見誤ると判断を大きく誤ります。

「友情」という予算

顧客は商品ではなく、あなた個人への信頼や「応援したい」気持ちで買っている可能性がある。結果、商品の実力を過大評価してしまう。

フィードバックの歪み

知り合いゆえ「実はこの機能はいらない」という本音を言いにくい。好意的な感想を真に受け、誤った手応え(PMF=商品が市場に受け入れられた状態)を確信してしまう。

再現性の欠如

コネが尽きた瞬間、商談を取れる確率が急落する。成約期間も数週間から数ヶ月へ伸び、「本当は売れていなかった」現実に直面する。

事業が本当に軌道に乗ったかを測る試金石は、「面識のない第三者を、再現できる手順で獲得できるか」です。知人の数社で満足せず、「見ず知らずの相手をどう口説くか」を早い段階から試しましょう。

最初の営業は「経営者自身」がやるべき理由

「営業は苦手だから担当者を雇って任せたい」——こう考える経営者は少なくありません。しかし、立ち上げ期に営業を外注・丸投げするのは、最も貴重な学習機会を捨てるに等しい行為です。最初の営業は、経営者・事業責任者自身が担うべきです。

ビジョンは本人にしか語れない

未完成の商品は「今ある機能」でなく「これから実現する未来」を情熱を持って語る必要がある。この熱量は外部の営業担当には再現しにくい。

その場で判断できる

「この機能があれば」「この価格なら」という要望に、経営者ならその場で仕様変更や価格調整を判断できる。商談が「仮説を検証する実験室」になる。

初期の商談は「売上」と「学び」の二重構造で捉えます。ここで得る3つの学び——①誰が本当の意思決定者かという顧客理解、②絶対に必要な機能(Must have)とあれば嬉しい機能(Nice to have)の切り分け、③どんな言葉が響き顧客がどこにいるのかという売り方——は、そのまま組織の資産です。経営者が売れなかった商品を、後から入った営業担当が売るのはほぼ不可能です。

市場参入の設計から初期営業まで、事業の立ち上げに伴走します。

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新規事業の営業は「普通の営業」と何が違うか

既存事業の営業と新規事業の営業は、前提がまるで違います。この違いを理解しないまま既存のやり方を持ち込むと、うまくいきません。

商品

既存は「売れると分かっている商品」を売る。新規は「売れるか分からない商品」を売る。

市場

既存は確立された市場が相手。新規は、需要があるか未検証の市場を開拓する。

顧客

既存は「誰が買うか」が明確。新規は「誰が本当の顧客か」を探すところから始まる。

予算

既存は相手に確保済みの予算を取りにいく。新規は、まだ予算化されていない中で別の予算を崩してもらう。

初期顧客を見つける3つのチャネル

「見ず知らずの相手」をどう見つけるか。ここで効率やスケール(規模拡大)を求めてはいけません。最初は泥臭く手作業でやるのが結局は最短ルートです。代表的な3つのチャネルを紹介します。

①人脈+その場で使わせきる

知人に「試してくれる?」と言われたら、その瞬間に「今すぐ始めましょう」とセットアップまで終わらせる。決済サービスを広めたStripeの創業者が実践したとされる手法で、「後で試すね」という先延ばし(=使われない最大の原因)を物理的に防ぐ。

②顧客が集まる場所への潜入

RedditやX、業界フォーラム・掲示板で、既存商品や今のやり方への不満を書く人=「痛みの跡」を探す。売り込まず、まず「専門家の助言」として接触し信頼を築く。

③手間をかけた「個別のラブレター」

AIの一斉送信ではなく、相手を深く調べた一通ずつのメッセージを送る(Do things that don't scale=規模化できないことを、あえてやる)。課題が明確な層には、特定の悩みキーワードで検索する人に絞ったネット広告も効く。

商談で成果を出す「聞く技術」

実績ゼロの商談で最も大切なのは、上手に話すことではなく、上手に聞くことです。基本の姿勢は3つ。①主役は顧客で、自分は黒子に徹する。②顧客は説き伏せる相手ではなく、同じ課題を一緒に倒す「仲間」。③営業とは、質問で相手の課題を引き出す行為。この姿勢を体現する質問の型が「SPIN(スピン)」です。

S(状況)

相手の現状や事実を確認する質問。「今はどうやって対応していますか」

P(問題)

潜在的な困りごとを明らかにする質問。「その方法で困ることはありませんか」

I(示唆)

その問題を放置すると何を失うかに気づいてもらう質問。「それが続くと、どんな損失になりますか」

N(解決の価値)

解決できたら何が良くなるかを、相手自身の言葉で語ってもらう質問。「それが解決したら、どう変わりますか」

さらに商談では、顧客の3つの「なぜ」に答えます。「なぜ買うのか(Why Buy)」「なぜあなたから買うのか(Why You)」、そして最大の壁「なぜ今なのか(Why Now)」です。BtoBの最大の競合は他社ではなく「社内の他の優先事項」、つまり「今じゃなくてもいい」という先延ばし。突破には、期間限定の特別条件やLOI(意向表明書=「導入を前向きに検討します」という書面)で緊急性とコミットを引き出すのが有効です。

「買うサイン」と「買わないサイン」を見分ける

商談中の相手の反応には、成約に近づいているかどうかのサインが表れます。これを読み違えると、脈のない案件に時間を溶かしてしまいます。特に中堅・大企業では、現場が乗り気でも法務・情報システム・購買部門の審査という「契約を殺すプロセス」が待ち受けます。誰が本当の意思決定者かを早めに見極めることが、取りこぼしを防ぎます。

良いサイン

予定になかった法務・情報システム部門・役員クラスを、相手が自発的に会議へ呼び始める。社内の関門を通す準備が動き出した証拠。

悪いサイン

「〇〇の機能があれば買う」という言葉。実際に作っても買わないことがほとんど。「無料なら使う」も同様で、お金を払うコミットがない相手は本当の顧客ではない。

稟議を通す「営業の道具」をそろえる

商談が進むと、担当者はあなたに代わって社内を説得する役目を担います。上司や役員を口説くための「武器」を渡せているかが勝負を分けます。そろえたいのは、一目で価値が伝わる営業資料、競合との違いを整理した比較表、そして「導入するとどれだけ得か」を数字で示すROI(費用対効果)シミュレーションです。特にROI試算は稟議を通す決め手になります。

10社から100社へ——「型」に落とし込む

質の高い10社を獲得できたら、次は「手作業で得た知見を、誰でも再現できる型(プレイブック)に落とし込む」段階です。鍵は、狙う顧客像(ICP=理想の顧客像)を「気持ち悪いほど具体的に」描くこと。「IT企業の部長」では粗すぎます。「システムとエクセルのデータが二重管理になり、手入力に追われている営業部長」まで解像度を上げると、誰に何を言えば響くかが定まります。

移行段階で見るべき数字は3つ。①見込み客の候補をどれだけ生み出せているか、②そのうち商談化した割合(ターゲットの精度を映す)、③顧客が最初の成果を実感するまでの時間(Time to Value)です。特に3つ目は、顧客が離れるか定着するかを予測する最重要指標です。最初の10社は単なる売上ではなく、経営者が「顧客の解像度」を手に入れる通過儀礼——そこで得た知見こそが、事業を次の段階へ押し上げる最大の資産になります。

よくある質問

実績ゼロで信頼を得るには?

広く狙わず、強く刺さる相手に絞ります。最初の数社に手厚く対応し成果を出して、その事例を次の信頼材料にします。

最初の顧客はどう見つける?

既存の人脈、課題が明確な相手、自社が一番役に立てる領域から。「誰でもいい」より「この人なら必ず役立てる」を選びます。

値引きしてでも実績を作るべき?

条件次第です。事例公開や継続前提など見返りとセットなら有効。ただし「安いから選ばれた」状態は再現性が低い点に注意します。

市場・顧客・提供価値・販売方法を一つの設計としてつなぐ全体像は「BtoB新規事業のGTM戦略設計ガイド」で解説しています。

YME Technologyの新規事業支援について

YME Technologyでは、新規事業の初期顧客獲得を支援しています。ターゲットの絞り込み、初期顧客への提案設計、事例化による信頼構築まで、実績ゼロからの立ち上げを現場に入り込んで一緒に進めます。

「最初の顧客が取れない」「事業を軌道に乗せたい」という方は、まず初回45分の無料相談で、初期顧客獲得の突破口を一緒に探しましょう。

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蛭田 佳人(Yoshito Hiruta)

代表 / YME Technology

新卒からIT業界でエンタープライズセールスに従事し、大手企業向けの営業支援・DX推進を経験。現在は独立し、AI活用・営業プロセス改善・集客の仕組みづくりを一貫して支援。

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