社内にAI活用を浸透させる「AI推進担当」の育て方——旗振り役がいないと定着しない
目次
こんな人に読んでほしい
- ▸AIツールを導入したが、現場で使われず定着しない経営者
- ▸「誰がAI活用を進めるのか」が曖昧な会社
- ▸AI推進の担当を置きたいが、どんな人を選べばいいか分からない方
- ▸社内にAI活用の文化を根づかせたい方
AIツールを導入しても、「結局、現場で使われない」というケースは非常に多いものです。その大きな原因が、「旗振り役の不在」です。誰かが推進しなければ、新しい取り組みは定着しません。本記事では、社内にAI活用を浸透させる「AI推進担当」の選び方・育て方を、中小企業向けに解説します。
なぜ「旗振り役」が必要なのか
新しいツールや取り組みは、放っておくと定着しません。人は慣れたやり方を変えたがらず、「忙しいから後で」と先延ばしにします。これを乗り越えるには、継続的に推進する「旗振り役」が必要です。
AI推進担当は、ツールの使い方を広め、現場の疑問に答え、活用事例を共有し、定着を後押しします。この役割を担う人がいるかどうかで、AI活用が「一部の人だけ」で終わるか、「組織全体」に広がるかが分かれます。
AI推進担当に向く人材
AI推進担当に求められるのは、必ずしも「ITに詳しい人」ではありません。むしろ重要なのは、別の資質です。
新しいもの好き・前向き
AIに興味を持ち、自分で試してみる人。完璧でなくても「まずやってみる」姿勢がある。
現場を理解している
業務の実態を知っており、「どこにAIを使えば役立つか」を判断できる。現場の信頼がある。
教えるのが得意・面倒見が良い
他のメンバーに使い方を伝え、疑問に親身に答えられる。人を巻き込める。
橋渡しができる
経営と現場、技術と業務をつなげる。難しいことを分かりやすく伝えられる。
「ITが得意な人」より「現場に信頼され、人を巻き込める人」の方が、推進役として機能することが多いのです。
推進担当を「孤立させない」
AI推進担当を任命しても、本人に丸投げして孤立させると失敗します。「あなたに任せた」だけでは、本人が疲弊し、周囲の協力も得られません。
重要なのは、経営者が明確に後ろ盾になることです。「AI活用は会社の重要方針だ」と全社に示し、推進担当に必要な時間・権限・予算を与える。経営の本気が伝わって初めて、推進担当は動きやすくなり、現場も協力します。推進は、担当者一人の仕事ではなく、経営との二人三脚です。
浸透の進め方
AI推進担当が浸透を進める際の、効果的な手順があります。
- 1.まず自分で使い込み、効果を実感する(説得力の源になる)
- 2.「効果が見えやすい業務」から、小さく成功事例をつくる
- 3.その成功を社内に共有し、「使うと楽になる」を実感させる
- 4.使い方の研修・サポートを行い、現場のハードルを下げる
- 5.活用が進んだら、横展開して全社に広げる
「いきなり全社で完璧に」ではなく、「小さな成功を見せて、徐々に広げる」のが定着の鍵です。
「使いたくなる」文化をつくる
AI活用の浸透は、強制ではうまくいきません。「使わされる」ではなく「使いたくなる」文化をつくることが理想です。
AIで楽になった事例を共有し、活用している人を称賛し、試行錯誤を許容する。「失敗してもいいからやってみよう」という空気が、活用を促します。AI推進担当の役割は、ルールで縛ることではなく、「使ってみたい」と思える環境をつくることなのです。
現場に定着するAI導入・業務効率化を伴走支援します。
AI活用支援を見る外部の力も活用する
中小企業では、社内にAIに詳しい人材がいないことも多いでしょう。その場合、外部の支援を活用しながら、社内の推進担当を育てるのが現実的です。
外部の専門家が初期の立ち上げや研修を支援し、社内の推進担当がそれを引き継いで定着させる。最初から自前で完璧を目指すより、外部の知見を借りながら社内に力を蓄えていく方が、確実に進みます。
兼任なら「週4時間」を確保する——時間と権限の設計
中小企業では、AI推進担当は既存業務との兼任になるのが現実です。その場合、曖昧に「余裕がある時にやって」と任せるのではなく、推進業務に使う時間を明示的に確保します。目安は週4時間、業務時間の1割程度です。たとえば「毎週金曜の午後2時間はAI推進に充てる。その間の通常業務は他のメンバーがカバーする」と決め、カレンダー上でブロックしてしまうのが確実です。時間が確保されない推進担当は、3カ月以内にほぼ確実に活動が止まります。
時間と同時に、権限も明文化します。最低限必要なのは、(1)AIツールの試用・契約を一定額(例:月3万円)まで自分の判断で決められる予算権限、(2)各部門に30分程度のヒアリングや説明会を設定できる調整権限、(3)業務手順の変更を提案し、部門長と直接協議できる立場、の3つです。「担当」という肩書きだけ与えて権限がない状態では、現場の協力を取り付けられません。
最初の90日プラン——30日ごとに区切って進める
推進担当を任命したら、最初の90日間の計画を経営者と一緒に作ります。この期間の目的は全社展開ではなく、「小さな成功事例を1つ作り、社内に見せること」です。30日単位で区切ると、次のような設計になります。
最初の30日:自分が使い込む+業務の棚卸し
推進担当自身が主要なAIツールを日常業務で使い込み、効果と限界を体感します。並行して、各部門の「時間がかかっている定型業務」を10個程度リストアップし、AIで短縮できそうな順に並べます。
31〜60日:1業務で試験導入
リストの中から「効果が見えやすく、失敗しても影響が小さい業務」を1つ選び、協力的なメンバー2〜3人と試します。対象業務の作業時間を導入前後で記録し、「議事録作成が60分から20分になった」のような数字を必ず残します。
61〜90日:成果の共有と次の計画
試験導入の結果を全社会議で共有し、うまくいった点だけでなくつまずいた点も正直に報告します。そのうえで、次の90日で広げる業務を2〜3個決め、経営者が「引き続き会社として取り組む」と宣言します。
90日で大きな成果が出なくても構いません。重要なのは、「会社としてAI活用が動いている」という事実と、測定された小さな数字が残ることです。これが次の展開の説得材料になります。
経営層のスポンサーシップを「行動」で示す
推進担当の成否を最も左右するのは、実は担当者本人の能力ではなく、経営層のスポンサーシップです。「任せたぞ」という言葉だけでは足りません。現場は、経営者の行動を見て本気度を判断します。
- ▸経営者自身がAIを使い、その様子を社内に見せる(朝礼で「この資料はAIで下書きした」と言うだけでも効果がある)
- ▸月1回、推進担当との定例15分を設定し、進捗と障害を直接聞く
- ▸全社会議でAI活用の進捗を報告する時間を固定枠にする
- ▸推進活動を人事評価に反映し、「余計な仕事」ではなく「評価される仕事」にする
特に効くのは、推進担当が現場の抵抗に遭った時に経営者が明確に後ろ盾になることです。「その取り組みは会社の方針だ」と一言添えるだけで、担当者の動きやすさは大きく変わります。逆に、経営者が無関心な会社では、どれだけ優秀な担当者でも浸透は進みません。
YME TechnologyのAI活用支援について
YME Technologyでは、社内へのAI活用の浸透を支援しています。推進担当の選定・育成、経営の後ろ盾の設計、小さな成功からの横展開、使いたくなる文化づくりまで、AIが現場に定着する形で一緒に進めます。
「AIが現場で使われない」「推進役を育てたい」という方は、まず初回45分の無料相談で、自社のAI浸透の課題を整理しましょう。
蛭田 佳人(Yoshito Hiruta)
代表 / YME Technology
新卒からIT業界でエンタープライズセールスに従事し、大手企業向けの営業支援・DX推進を経験。現在は独立し、AI活用・営業プロセス改善・集客の仕組みづくりを一貫して支援。
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